杉本純のブログ

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備えあれば憂い無し

以前、インタビュー用の質問項目を記した資料を忘れてしまったことがある。

取材先に着き、インタビューをする部屋に通されて、準備をするために資料を出そうと鞄を開けたら、ない。。。

資料を忘れてしまったことに気づいた時は啞然とした。普段から、出発する前に必要なものがきちんと入っているかどうかを何度も確かめてから出掛けるから、その日もきちんと確認したつもりでいた。しかし、完全に忘れていた。

たまたまその日は朝から別の取材に行っていて、一度帰ってインタビュー音声をパソコンに落としてから再出発したのだが、パソコンでのデータ処理に思った以上に時間がかかってしまい、出発がやや遅れてしまった。ICレコーダーは慌てながらも鞄に入れたが、資料を入れるのを忘れてしまったというわけだ。

私は常に時間に余裕を持って行動するよう心掛けている。集合場所にはかなりの時間的余裕をもって着くようにしているし、取材前の準備にもけっこう時間をかける。それは、時間がなくて慌てるとどうしても物事を俯瞰的に見られなくなり、ミスをする、それを見落とす、といったことになり良いことがないからだ。今回のケースは、まさにそういう経過を辿って事故を起こしてしまったケースと言える。

私は仕方なく資料を忘れたことを正直に先方の担当者に言い、質問用紙を私の分もコピーしてもらった。しかし、私は忘れてしまった質問用紙に複数の追加質問項目を書き込んでいて、それを使ってインタビューをしようと思っていたので状況が良くなったとは言えない。とはいえ、もう手遅れ。ここは仕方なく観念して、当初の質問用紙だけを頼りにインタビューをしてしまおうと決めた。

するとどうだろう。いざ取材を始めてみると、予定していた追加質問項目が頭に浮かんできて、ほぼ問題なく取材を終えることができた。それどころか、追加質問は相手との会話の中から次々と出てきたので、紙を見てばかりのぎこちないインタビューになることなくけっこうスムーズにやることができた。

これは、事前にきちんと準備していたことが奏功したのだろうと思った。取材の主旨、相手のプロフィール、記事にする上でのポイントなどを事前にかなり絞り込み、頭に叩き込んでおいたのが良かったのだろう。だから、一度話をし始めたら後からスルスルと追加質問が出てきたのではないか。

ある先輩ライターが、ライターの力が問われるポイントは三つあると言っていた。まず取材前の準備、次にインタビュー、そして原稿の善し悪し。そして私の経験では、準備が十分でないとインタビューが不十分になり、結果、原稿も良くないものになってしまうことが多い。その意味では、私がその日アクシデントに見舞われながらも不足なくインタビューすることができたのは、きちんと準備をしていたからだと言える。

準備ほど大事なものはない。備えあれば憂い無しだ。