杉本純のブログ

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「はやぶさ2」とパンスペルミア説

永い旅の途中

普段はあまりニュースを見てワクワクすることがありませんが、6月6日の朝刊に出ていた記事には興奮を覚えました。

JAXAの探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取し持ち帰った砂から、生命を形成するタンパク質の材料となるアミノ酸が見つかった、とのこと。これまで隕石の中にアミノ酸が見つかったことはあったものの地球に入った後に混入した可能性を否定できたかったそうですが、今回は間違いなく地球外の惑星の砂の中にあったらしいです。

生命の起源については諸説あるそうです。海底火山のマグマの中にアミノ酸があったとか、宇宙から飛来したとかです。私は松岡正剛『フラジャイル』(ちくま学芸文庫、2005年)で読みましたが、DNAの元になる原情報の種が宇宙から飛来したとする後者の説を「パンスペルミア説」というらしいです。

情報は、いつからかは分からないが太古の昔から、ヴィークルを替えながらずっと旅を続けている。今は、私をはじめとする地球上の物質を「肉体」というヴィークルとして、これから先の未来に向かう旅を続けている最中である。私や人類は壮大な物語の過程にあり、一人一人が情報を旅の終わりにつなぐ役割を背負っている。…そんな風に想像すると、ちょっとステキな感じがします。

今回の「はやぶさ2」の発見は、生命が地球外からやってきたとする説を後押しする形になるそうです。いうなれば「パンスペルミア説」を補強するのではないかと思われます。

まあ「パンスペルミア説」の正否はまだ分かりません。いずれにせよ私の一生は情報の永い旅のほんの一瞬でしかないわけで、また人間はその旅を前へ押し進める義務を背負っているわけではありませんが、それでも、今を生きる上で有益な視野の広がりを獲得できた気もするのです。