杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

岩波映画

町田哲也『家族をさがす旅』(岩波書店、2019年)を読んでいるが、色んな意味で面白い。

入院した父の事績を息子が辿る、というストーリーがまず興味深い。それは、私自身が家族の事績を辿ろうとしたことがあるからだ。私のは中途で休止しているが、本書に刺激され、久しぶりに再開しようかと思っている。次に、著者の町田自身がサラリーマン作家ということで、本作は私小説的な内容でもあることから、読んでいて、ストーリーとは違うところで色んなことを感じている。

そして岩波映画である。この小説の主人公(著者自身)は、緊急入院した父がかつて働いていた岩波映画製作所のことを調べ、関係者に取材して回るのだが、羽仁進とか黒木和雄とか田原総一朗などの実名がばんばん出てくる。

岩波映画の存在自体も、興味がある。私は岩波写真文庫の『新風土記』を全巻持っていて、これはいい仕事だなぁ、こういうのをやりたいなぁと思っていたし、「岩波」「映画」なので、懐かしくもあるし、今でも好きだ。

本書が岩波書店から出たのは、やはり岩波映画が出てくるからだろうか。とまれ、これほど興味深い要素が重なる本はけっこう珍しい気がする。