杉本純のブログ

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創作雑記2

いくつかのエピソードを書くのを予定していて、実際に書き進めていく。すると、あるエピソードに差し掛かった時に妙な違和感を覚える。どうもこれまでの流れからして、このエピソードは邪魔じゃないか、自然じゃないんじゃないかと感じる。

そんなエピソードは省いてしまえばいいのだが、これがなかなか簡単ではない場合がある。特に私小説なら実体験を元に書くので、ある出来事に強い「思い」があると、小説からあっさり省いてしまうのが憚られる。そういうエピソードは、虚構の小説でもあるのかも知れない。

そんな場合は、そのエピソードが全体の中でどういう役割を持つのか、またはどういう効果を上げるのかを考えてみる。主題を語っていく上でどうしても必要か、もし省いたらどういう小説になるかも考える。

私は最近、私小説から、かねて重要と思っていた二つのエピソードを思い切って割愛した。その私小説にはこれまで何度も挑戦していて、書くたびにこのエピソードは省かずにやってきたのだが、テーマを深く考え、それに相応しいストーリーを組むのを何度も何度もやってきた末に、ついにそのエピソードは省いてしまおうと思うに至った。

それまでは、地図上に行程を記すようにストーリーを組む中で、どうしても立ち寄らなくてはならない重要なポイントだと思っていた。だから省かずにいた。しかし何度も挑戦し、ついに納得いく形で終着できない経験を何度もしてきて、やっぱりこのエピソードは要らないんだと気づいた。

重要だと思っていたのは、先にも述べたように強い「思い」があったからだ。それは言うなれば「こだわり」というやつで、ユニークで力強いエピソードであればあるほど割愛するのが惜しくなる。しかし、そうしてこだわっていたからこそ、小説全体が歪になり、真に描きたい主題がぼやけてしまっていた。

そのエピソードを割愛してからというもの、主題を外さずずんずん書き進められるようになったと思う。まだ完成はしていないのだが、この判断は正しかったと思っている。