杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

山崎豊子と船場

恥ずかしながら私は山崎豊子作品は『花のれん』(新潮文庫、1961年)しか読んだことがないはずだが、こないだ書店で新潮文庫の『山崎豊子読本』(2018年)を見つけ、面白そうだったので買った。そうしたら本当に、山崎作品に馴染みの薄い私でも滅法面白いのである。

山崎が生まれた大阪・船場は今の中央区の辺りであり、私が仕事でよく足を運ぶエリアに近い。『読本』では冒頭に船場の旧地図を載せ、山崎の生い立ちや作品に関わるスポットと共に紹介している。

こういう作家ガイドは普通に面白い。土地の雰囲気や特色を描くのは小説の重要な要素の一つだと思うので、読者としては逆に、その土地のことを知ることが作品を深く味わうのにつながる。私は、自分の生活地域や故郷を舞台にした小説を実際に歩いて写真を撮りながら研究したいと思っており、過去に何度か実践している。だから本書で船場を山崎の生い立ちと作品と重ねて紹介している箇所は、楽しみつつも、紹介の仕方について参考にしながら読んだ。