杉本純のブログ

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山本七平『現人神の創作者たち』

山本七平『現人神の創作者たち』(ちくま文庫、2007年)は、『「空気」の研究』で知られる山本七平(1921~1991)の畢生の大作。

明治維新を引き起こし、日本人を無謀な戦争へと進ませた尊王攘夷思想、および天皇=現人神(あらひとがみ)と考える思想、その淵源を突き止めようとする途方もない試みだ。

現人神の思想は古代から受け継がれてきたわけではなく、徳川幕府の御用学者たちが「幕府の正統性」を立証しようとする過程で、日本の歴史や天皇像をあれこれ言い換えて「創作」したのだった。

その現人神から征夷大将軍として任命された徳川家なのだから全てにおいて絶対正しいという言い分で、天下を治めようとした。

しかし皮肉なことに、これが遠い未来の明治維新につながり、さらにはアジア・太平洋戦争へと突き進ませる遠因となった(らしい)のだから、恐ろしい。

歴史の解釈の仕方によって、政治は大きく動く。

というわけで、とにかく痛快無比の歴史ノンフィクション。ただし、古文書の引用が多過ぎて読解は困難を極める。でも面白い。