杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「TSUTAYA6時間立ち尽くし事件」

意識高い系は要注意

何がきっかけで知ったのか忘れてしまいましたが、吉田尚記『没頭力』(太田出版、2018年)に興味をもち、いま読んでいます。

サブタイトルは「『なんかつまらない』を解決する技術」。私自身、特に日常生活で「なんかつまらない」と感じているわけではありませんが、公私ともにやることが多く、一つのことに没頭したり集中したりする時間が取れていないな、と前から感じていたので、手に取りました。

「TSUTAYA6時間立ち尽くし事件」という面白い見出しがありました。著者の吉田はニッポン放送アナウンサーで、1975年生まれです。慶應大卒ですが、大学3年の3月の時点で就職先を決め、必要単位も全て取っていたらしい。それで朝からだらだら漫画を読み、飽きたらTSUTAYAに行って、将来のためになるからと映画を借りようとした、とのこと。しかしどんな映画が「ためになる」かが分からず、そのまま帰ってきたそうです。

〈なんでもイイじゃん〉。そう、そういう風に思える人は、その性格を大切にした方がいい。いい性格なんですよ、それって。〈とりあえず観ればいいんだよ〉。今だったらそう思えるんだけど、当時はどうしても意味を探してしまって、そのままTSUTAYAでぼんやり6時間くらい、ただ棚を見て帰ってくるわけです。結局、損得勘定で動こうとすると、そうなっちゃうんですよ。

それで「ああ、また一日無駄にしてしまった」と後悔したらしいですが、これは私も学生時代にたくさん経験し、もっと言うと社会人になってからも長く続いていました。

その日は一生に一度しかないのだから有意義に過ごさなくてはならない。どんなことでもいい、何か得たい、前進させたい、と考え、頭か心に栄養になるものを探す。もちろん都合よく意味のありそうなことが見つかる日もありましたが、見つからない日もあり、時間を無駄にしたと思ったことがけっこうありました。

言うなれば、意識が高すぎるゆえのノイローゼかと思います。「意味がある」と思える生活を送っていないと不安で、少しでも有意義なものを、という損得勘定に支配されて彷徨う。そんな具合です。

最近はそういうことは少なくなってきましたが、意識が高い状態を続けているとそういう事態を招いてしまうので、気をつけています。意識高い系の人は注意が必要です。