惨めな子の勇敢で美しい生き方
1941年のディズニー映画『ダンボ』(ベン・シャープスティーン監督)を観ました。人生で恐らく三度目の鑑賞です。
サーカス団のゾウの子ども・ダンボは、耳が特別に大きいことが理由で虐められるが、最終的にはその大きな耳で空を飛び、サーカスの人気者になるという話。虐められっ子が特技を使って人生を逆転させる痛快な話です。
私の中ではディズニー映画の最高傑作です。『アラジン』も『プーさん』も好きですが、やはり『ダンボ』の痛快さと感動的なところは群を抜いていて、ディズニーどころかアメリカ映画全体の中でも屈指の名作ではないかと思うくらいです。
60分余りのコンパクトな作品。余計な部分は一切ない。とにかくダンボが愛らしく、母親のジャンボと親子の愛を確認し合う部分は、涙なしには観られません。耳が大きいという外見上の特徴は虐めの原因になるのですが、ダンボはそれを空を飛ぶという特技に昇華させ、スターになります。
人間の世界でもスターというのは押し並べてそういう人なのではないかと思うのは、私だけでしょうか。
惨めな状況にあるダンボの味方になるのは、ネズミのティモシーであり、ならず者のようなカラスたちです。『ダンボ』は、見方によっては惨めな境遇にある者たちの一発逆転の物語のように見えなくもないのです。
余談ながら、サーカスというと動物たちにとっては過酷な世界で、ダンボはそこでスターとなり、ハリウッドと契約するまでになるわけですが、その後も恐らく、空飛ぶゾウという見世物の生涯を生きるのです。スターになっても世の中の構造は変わらず、生き方もまた変わらない。ハッピーエンドにそのような暗さをも想像させる点からしても、本作は揺るぎない名作であると思います。