ストーリーテリングの妙
先日、NHKで松本清張原作のドラマ「天城越え」が放送されたので、見ました。
初回放送は1978年10月なので、私が生まれるよりも前になります。佐藤慶、鶴見辰吾、宇野重吉、中村翫右衛門、荒井注…俳優たちが懐かしい。鶴見辰吾はまだまだ現役ですが、この頃は子役で、初々しさがありました。
さて内容は、あの川端康成「伊豆の踊子」でも出てきた天城峠の付近で佐藤慶扮する旅の土工が殺される、というもの。犯人は鶴見扮する少年なのですが、少年、女(大谷直子)、土工の三者三様の不遇な人生が下敷きになっていて、事件の全体像がわかってもすっきりとはせず、むしろ何とも言えない気分にさせられます。
視点人物と呼べるのは中村翫右衛門扮する元刑事で、事件はその刑事が現役の頃に起きたものという設定です。迷宮入りしたと思われる事件を振り返っていたところ、土工と接していたのは女の他に少年もいたということを思い出し、少年に会いに行く。少年は今や爺さんになっていて、事件の場所から離れたところで印刷屋を営んでいる。これが宇野重吉です。
殺人の動機、三者三様の不幸な人生などもそれなりに面白いものですが、やはり何といってもストーリーテリングが巧いなあと思いました。
原作は未読なので読んでみたいです。