杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

団地と時代

原武史『レッドアローとスターハウス』(新潮文庫、2015年)を読んでいる。堤康次郎の西武が支配する沿線の中には多くの団地が建ち、その中で堤の思想に反する共産主義思想が育まれていった、という内容で、面白い。

本書の対象はおおむね東京、埼玉の西武沿線の団地である。原は生まれてから三歳までひばりが丘団地の88号棟に住んでいたらしく、そのことがどうやら本書を著す動機の一つにもなっているようだ。

私は愛知県の名古屋のベッドタウン岩倉市という小さな市にあった(今もある)団地で育った。周囲には実家が九州だという人が少なからずいたが、出張などで九州に行くことがあると、あああの頃のあいつの苗字と同じ地名じゃないか、じゃああいつはここが実家だったんだな、と思うことがけっこうある。

岩倉は名古屋のベッドタウンだった。つまり、知人の親は九州から出稼ぎか何かで岩倉に出てきた、ということなのだろう。それはそれで、上記の西武と堤と共産主義じゃないが、地方の町から大都市近郊への移住という、時代の移り変わりの中で集中的に起きた現象の一つだったのではないかと思う。

私は今も東京の団地に住んでいるのだが、ここでも時代を反映した色んな現象が起きていて面白い。『レッドアローと…』のようにまとめるのは難しいと思うが、何かテーマを設けて書き物をしてみたいと思う。