杉本純のブログ

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里見弴の東條暗殺計画

文学研究の一環で昔の新聞の縮刷版を読んでいたら興味深い記事を見つけた。日経新聞1991年5月18日の36面の文化欄に載っている「東条暗殺計画 里見弴が文士の心情 告白テープ明るみに」という見出しの記事である。

里見弴が東條英機を暗殺しようとしていたのは、過去に何かで読んで知っていた。で、日経縮刷版をぱらぱらめくっていたらこんな見出しが出てきたので見入ったのだ。

記事は、日本債券信用銀行勝田龍夫名誉会長が、里見が戦争末期に首相の東條を暗殺しようと思い詰めていたエピソードを「私の履歴書」で公にし、このたびさらに、その録音テープの存在を明らかにした、というもの。テープは昭和57年9月3、4日の二日間、那須の勝田別荘で収録されたもので、記事にはその要旨が記されている。

記事には江藤淳の話が載っている。江藤は、里見が、五十代後半という分別盛りで暗殺計画を本気で立てたとは考えにくい、激語の一種ではないか、興味深いが距離感と留保をつけてみたい、などと話したようだ。