杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

蔵書始末記番外篇 本棚

虎の威を借る狐

蔵書の大量処分の一環で、長年使った本棚を三台手放しました。三台も手放すことができたのは我ながら驚きで、処分量がそれだけ膨大だということの証左といえるでしょう。

蔵書とともに本棚のまた、私のちっぽけな自尊心を満足させるための物の一つだったように思います。以前の私は名著名作をせっせと買い、たとえ積ん読状態になっても本棚に置くことに熱心になっていました。古典、全集の類いが詰まった本棚が私の部屋にズラッと並ぶことで、何とも言えぬ愉悦を感じたものです。それは多分、自分に自信がない人がブランドものを身につけた時に味わう愉悦に似ているのではないか。虎の威を借る狐ならぬ本棚の威を借る似非作家、といったところだったでしょうか。

しかし、積ん読がいよいよ膨大になり、公私ともに多忙になって本が満足に読めない状態になると、本棚の存在は蔵書のそれとともに次第に重たいものに変わっていきました。そして、ちょうど図書館をヘビーユーズするようにもなったこともあって、今回の蔵書の大規模処分とともに、本棚の廃棄も決断したのです。

けれども正直に言えば、本を介して「知」を得ること、いかに読書と本を生活に溶け込ませていくかについては、私自身まだ試行錯誤というか、迷いと不安が残っています。蔵書と本棚は、良くも悪くも「知が手元にある安心感」をもたらしていたかもしれません。それは考え始めると意外に深い問題のようで、また別の機会に考えてみたいと思います。