杉本純のブログ

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魂はアナログ、手段はデジタル

佐伯一麦と鐸木能光

佐伯一麦『Nさんの机で』(田畑書店、2022年)は、佐伯が身の回りの「もの」について、自伝的要素を散りばめながら語っている随筆集です。その中の「カメラ」という章に、作家の鐸木能光(たくき・よしみつ)との関係について書かれています。

佐伯は1997年にノルウェーに旅立ち、現地在住時に知ったQXエディタというソフトを使って原稿を書くようになります。ソフトのカスタマイズのノウハウを教え合うメーリングリストに入っていたのが鐸木でした。

鐸木は佐伯と同じく文筆業者で、『Nさんの机で』には「小説すばる新人賞を受賞」とあります。作品名は書いてありませんが、『マリアの父親』というタイトルで、第4回小説すばる新人賞を受賞し、集英社から刊行されています。

佐伯は文筆業者仲間ということで鐸木と交流を始め、SF作家の森下一仁とともに「文藝ネット」を立ち上げました。このサイトは現存しており、佐伯の文章を今でも読むことができます。

サイトのトップページには「魂はアナログ、手段はデジタル」とあり、今でもかくありたい、と佐伯は『Nさんの机で』に書いています。今は、もはや佐伯のデビュー時のように毛筆で書く人はもちろんのこと、手書きの原稿用紙に書く人も皆無に近いことでしょう。加えて、単にパソコンなどで書くだけでなく、ホームページやSNSなどネットを活用した販促も当たり前になりつつあります。やる気になれば行動力次第でかなり広く展開できます。

Nさんの机で