杉本純のブログ

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「会社はあなたを助けてくれません」

組織と人間の関係

井上智介『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』(WAVE出版、2021年)を読みました。著者は産業医精神科医、健診医で、多くの会社員や患者を診てきた経験から、何らかの不安要素がネックとなって辞めたい会社を辞められない読者に様々なアドバイスをしています。ダイレクトでインパクトがあるタイトルそのままの内容です。

井上は「はじめに」で「会社はあなたを助けてくれません」とはっきりと述べており、アットホームな会社にはそれなりの同調圧力があり、それに馴染めない人は阻害されると書いています。

なるほどたしかに、ブラック企業であれば会社の「助けない」姿勢が明瞭ですが、そうではない家族のような温かさのある企業でも、組織の風土に馴染まない人材はやがて排斥されることになるというのは、その通りだと思います。

押し並べて組織というものは、その構成員に対し、組織自体にとって都合のいいパフォーマンスを求めるものです。そうでない人がいた場合、ブラックであれば、良質なパフォーマンスをするよう導くために暴力の類いを用いるわけです。ブラックでない会社は暴力は用いないはずですが、しかしどれだけ優しく接するとしても、いいパフォーマンスができない人をいつまでも置いておくはずがない。組織にとって不要な人材だと見極めれば、少しずつ中心から外側へ追いやっていき、やがては本当に外へ出ていくように仕向けていくでしょう。

ブラックの場合と異なり、そういう会社に非を認めることは難しいかもしれませんが、会社は社員のために存在しているわけではないということ。つまり井上の言うように「会社はあなたを助けてくれません」ということです。