杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「集中ボーナス」と「トンネリング税」

概念の表現の巧みさ

昨日も記事にしたセンディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール『いつも「時間がない」あなたに』(大田直子訳、早川文庫、2017年)に、面白いフレーズがありました。「集中ボーナス」と「トンネリング税」です。

欠乏は、当人の注意を占拠しますが、差し迫っていることに対処させる意味で、限定的ながら当人にとってメリットがあります。「集中ボーナス」は、そのメリットのことです。時間がない時ほど生産性が向上するのはよくあることで、ライターも締め切りに追われている時にガンガン書けたりするものです。

欠乏によって陥る状態は「トンネリング」といい、これはトンネル内は鮮明に見えるものの外側が見えなくなることで、まさにこのブログでもたびたび言及してきた「視野狭窄」だと思いました。トンネリングには集中ボーナスというメリットがある一方。様々なデメリットもあり、それを「トンネリング税」といいます。注意不足によるケアレスミス全般のことですね。

集中ボーナスとトンネリング税の差し引きが問題とのことで、まあボーナスが税に上回っていないと損なわけですね。

「集中ボーナス」といい「トンネリング税」といい、海外の自己啓発書(の類い)では概念が巧く表現されていて、感心させられます。『LIFE DESIGN スタンフォード式 最高の人生設計』(千葉敏生訳、早川書房、2017年)には「重力問題」という言葉がありましたが、あれも巧いと思いました。