杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

窓際族

一種の「意識低い系

藝人・有吉弘行の『お前なんかもう死んでいる』(双葉社、2010年)を読んでいます。
有吉(「弘行」は「ひろいき」と読むらしい)といえば、猿岩石。「電波少年」でユーラシア大陸横断ヒッチハイクでブレイクしたコンビでしたが、ほどなくしてテレビで姿を見なくなりました。コンビは解散したらしく、のちにテレビで有吉のみを見るようになりました。今では毎日のようにテレビに出ています。

ある人がブログでこの本を紹介していて、面白そうだと思って読み始めました。面白い。いわゆる「一発屋」の藝人として頂点と奈落を両方経験している人だからか、言葉に確信があるというか、力がある感じがします。

「第4章『プロ一発屋』9の法則」で有吉は、自分は「芸能界の窓際族」になるのが理想だと書いています。誰も見ていないようなマイナーな番組に出て、有名ではないもののギャラはきちんと稼ぐ。頭一つ出るような「出る杭」にならず、名誉よりも金を取る、というスタイルですね。

志が低い気もしますが、現状維持とか守りに入っては駄目だと、別のところでは書いている。今のテレビでの露出度を思うと、決して守りには入っていないことが分かります。

恐らく本人としては、窓際できちんとお金を貰い続けられるのであれば、本当にそれでもいいのでしょう。一方で、攻めるところではきちんと攻めなくてはならない、ということも分かっているのです。

この「窓際族」というのは面白いキーワードだなと思いました。作家なら、芥川賞とか直木賞とかをとって注目されるより、そんなに有名でなくてもいいからコンスタントに本を出したり、雑誌に書かせて貰ったりする生き方になるでしょうか。これも一種の「意識低い系」かもしれません。