杉本純のブログ

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「真剣に生きる」

西村賢太山田ルイ53世の対談

西村賢太は昨年、週刊誌「SPA!」で芸人の山田ルイ53世と対談しました。今回、西村の訃報に接して、SPA!がウェブ版で同記事を改めて掲載しました。

本記事は特集「中年のお悩み白書」の一部であったようですが、西村の中年期を迎えてからの人生観や死生観が窺えます。この対談、面白い。というか、色々と考えさせられる内容になっています。

西村が芥川賞を受賞したのは40歳代ですが、当時本人は「ものすごく元気だった」そうです。しかし50代に入ると変化が起きてきて、体力と気力を保てるのは運が良くてもあと十年くらいと感じ、「もう人生の日は暮れようとしている」と悟った。

50代に入ってから体力と気力が下降する、というのは、西村の言うほど悲しい雰囲気なのだろうか、少し割り引いて考える必要があるのではないかと思いました。もちろん一般的にはすでにピークの20代くらいから下降しているのでしょうけれど、西村の場合、酒や煙草をヘビーにやっていたはずで、衰えの度合いはかなりの大きさだったのではないか、と思うからです。

人生はあっという間に過ぎる

一方で、西村はその頃からようやく「真剣に生きる」ことを具体的に意識し始めた、とのこと。「人生の残り時間が少なくなって『小説以外の興味は何もない』と改めて自覚したときに、他の一切が無駄に思えて、切り捨てることができました」と言う。そこには、書きたいものがまだ山ほどあり、自分は何も残せていない、という思いがあったそうで、言うなれば「これを書かないことには死ねない」といった気持ちかと思います。

西村は結局、書きたいものを書き切ったのか。それは分かりませんが(恐らく書き切れていません)、その姿勢は重要だと思います。元気な間は、やりたいことを実行するのを未来に先延ばしにしがちになりますが、人生、「いつか」などと言っているとあっという時間は過ぎてしまう。「死ぬまでにこれをやりたい」ということは元気なうちに実行するべきだと思います。