ある意味では恋かも
石黒圭『文系研究者になる』(研究社、2021年)は、文系分野の研究者を志す人向けに「研究する人生」について指南する本です。
目次をざっと見たところ、大学院に行って修士や博士を目指す人向けの本かなと思いました。現にそうなのでしょうけれど、私がやろうとしていることにも色んなヒントがありそうだなと思えたので、読んでいます。
冒頭、いきなり「研究は恋」とあり、ちょっと驚きました。そうきたか…と。
私が思うに、研究は恋と一緒であり、何も特別なことではありません。ある人が好きになり、その人のことをもっとよく知りたいと思う気持ちと、ある対象が好きになり、その対象のことをもっと深く知りたいと思う気持ちは、まったく同じです。
誰かを好きになったとき、何かを好きになったとき、誰でも研究を始めます。小さい子どもが鉄道や恐竜に興味を持ったとき、驚くほどの深さで研究を始めますし、株式投資や馬券購入を始めた大人も、損失を出さないように企業の過去の業績や競走馬の過去の戦績の研究を始めます。何かにはまった人はかならず研究をするのです。大学で行われる研究を特別視する必要はありません。
恋をしたとき、まず、好きになった相手がどんな人か、相手のことを知りたいという気持ちから研究が始まります。相手のしぐさ、表情、服装、持ち物など、相手の外面を慎重に観察し、そこから、相手がどんなタイプかを分析します。
率直に言って、私は研究を恋だとは思っていませんでした。というか、考えもしなかった。しかし、そういう側面がないと言えば嘘になりそうな気もします。
たしかに、どうしようもない欲求に突き動かされ、時間と手間をかけて取り組み、成果を得られればこの上ない喜びを感じるのだから、ある意味で恋をしている状態と言えるでしょう。
恋をする人は生き生きとして輝く?から、研究は人生を充実させる上で必要なことなのかも知れません。まぁ、一方で時には苦しんだり病んだりすることもあるのでしょう。