杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

仕事の何を教えるか

ヤマザキマリ『仕事にしばられない生き方』(小学館新書、2018年)を読んでいて、考えさせられるところがあった。

ヤマザキの母親はヴィオラ奏者で、ヤマザキも3歳の時からピアノとヴァイオリンを習っていた。しかしヤマザキ自身は絵を描くことの方が好きで、ある日意を決して「将来は絵描きさんになろうと思う」と母親に言った。

すると母親はある日、『フランダースの犬』を買ってきて、ヤマザキに読ませた。『フランダースの犬』で、主人公ネロはパトラッシュと苦労を重ね、貧しさの中で死んでしまう。本を読み終えたヤマザキに、母親は、絵描きになるということはそんな風になるかもしれないということだ、それでもいいか?と問うたらしい。

そういう母親についてヤマザキは、自身が音楽家という厳しい職業をやってきたからこそ当時小学生の自分にシビアな現実を突きつけてきたのだろう、と述べている。ただし、母は絵描きになるなんて駄目だ、と頭ごなしには言わなかったと書いている。

私はこの箇所を読んで、考えた。もし我が子が絵描きになりたいと言ったら、どういう行動をとるだろう?

以前あるテレビ番組で、親は子に仕事のことを教える時、その仕事の楽しいところや面白いところを伝えるのが育児としては健全である、と心理学者が話していた。もし、辛いぞぉなどと言ったら、そんな仕事になぜ親は就いているのかと子は矛盾を感じるし、そもそも仕事は辛いもの、と思ってしまったりするから、というのが理由だったと記憶している。

それまでの私は、もし我が子がライターになりたいと言ったら、ライターなんてめちゃくちゃ大変だぞと言うだろうと考えていた。しかしテレビを見た時、たしかに心理学者の言うとおり、子供には仕事の肯定的な面を強調する方が前向きで望ましい、と思ったものだった。

そんな次第で、もし我が子が絵描きになりたいと言ったら、私なら自分が知っている限りで絵描きの楽しい面や醍醐味を教えると思う。