「いっしょうこうなりてばんこつかる」と読む。一人が功績を上げる陰では多くの人が犠牲になっている、という意味。本多信一『内向型人間の仕事にはコツがある』(大和出版、1997年)の中にあり、初めて知った。ただし同書には「一将成って万骨枯る」とある。
金メダルを取った人の背後には数多の敗者がいて、大会にすら出られなかった人がもっとたくさんいる、といった言説はたまに聞くが、それも似たようなものかと思う。
勝ち組企業のヒット商品の背後には没になったアイデアが山のようにある。負け組企業もまた、同じようなアイデアの商品を先に市場に出そうと必死に開発していた…そんな事例は枚挙にいとまがないだろう。
『内向型人間の仕事にはコツがある』には、世には男の成功者が書いた成功のための本があるが、そこにあるのは競争に勝つことを大切にする観点だけだ、といったことが書かれている。そうかもしれない。
私は以前「こぼれ落ちた人」という小説集を出したが、そこに出てくる主人公はいずれも「万骨」の方かと思う。