杉本純のブログ

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漸加方式

新しい小説に取り組んでいるところだが、それはべつにミステリーではないものの、何かの参考になればとL.トリート編『ミステリーの書き方』(大出健訳、講談社文庫、1998年)をぱらぱら読んでいる。

これはアメリカの売れっ子ミステリー作家たちが、小説の書き手としての手の内を明かした本だが、その中でフレドリック・ブラウンという作家が「プロットの組み立て方」を語っている章がある。

ブラウンによると、「作家は漸加方式でプロットを組み立てる」らしい。「漸加」とは「徐々に付け加えて増やしていくこと」で、人物や主題や背景や一つの単語など出発点は何でもいいが、それを漸加を通じてプロットに育てるのだという。

ブラウンはこの章で、妻に何か単語を挙げるよう言い、返ってきた「金魚」という語から実際にプロットへと膨らませる漸加方式を実演している。が、途中で終わっていてプロットは完成していないため、そこからどうすればいいかはよく分からない。

だが、始まりはたしかに単語とか、一つの風景とか、ちっぽけな欠片のようなものだと思う。そこから諦めずに漸加していくことが大切だろう。