杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

バルザックはタイトルが下手か

バルザック『あら皮』(小倉孝誠訳、藤原書店、2000年)の植島啓司山田登世子による巻末対談の冒頭、植島が以前に『セラフィタ』や『谷間の百合』を読んでいた、当時はあまりバルザックは読まれなかった、と言い、山田がこう言う。

谷間の百合』は退屈です。でもタイトルは一番いいですね。『ペール・ゴリオ』とか『セザール・ビロトー』とか、バルザックは、想像力のわかない題が多い。『あら皮』という題も決めるのにすごくもめて苦心しました。バルザックはタイトルが下手な作家なんですね。スタンダールだと、『赤と黒』なんてカッコイイんですけれど。『ラブイユーズ』とか『ウジェニー・グランデ』とかいわれても、何だろうってわからない。

ほおー…。『谷間の百合』が良いなら「毬打つ猫の店」はどうか、「知られざる傑作」はどうか、「赤い宿屋」はどうか、と思う。また単体ではないが姉妹篇に冠した「貧しき縁者」というタイトルは、私は意味深長な感じがして上手いと思うし、好きである。

バルザックは本当にタイトルが下手なんだろうか。そうかも知れないが、私はけっこう、シンプルなのがかえって想像を掻き立てられる気がするのだが。。私は自分の小説のタイトルに簡単な単語をあてることが多い。それはバルザックの影響かも知れない。