杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

千一夜物語

最近、『完訳 千一夜物語(一)』(豊島与志雄渡辺一夫、佐藤正彰、岡部正孝訳、岩波文庫、1988年)を気が向いた時にぱらぱら読んでいる。計1001話、文庫で13巻もあるので、一気に読み通す気にはとてもなれないので、気が向いた時だけページをめくるのである。一方で、こういう浩瀚な書物の世界に、時の経つのも忘れて耽溺したい気持ちもあって、いつかそういう日が来ないものかという期待もないではない。が、未来に期待などしたところでその期待どおりのことなど起こらないので、読みたい箇所を読みたいように読むのだ。

シャハラザードが夜ごとシャハリヤール王に語り聞かせる、奇譚の数々。文庫第一巻の表紙裏の説明文には、こんな風に書かれている。

イスラム世界の民話・伝説が奔放不羈な空想の翼に乗って燦然と花開いた物語の饗宴アラビアン・ナイト。千と一夜にわたってシャハラザードが繰り広げる綺談のアラベスク歓喜と陶酔の夜へとあなたをいざなう。

いいなあ、きっと俺はこういう物語を作りたかったんだなぁと、自分の幼時からの夢を思い起こした。目もあやな色彩と形、入り乱れる動植物、欲望と運命に翻弄される人間たち…。一つの世界を封じ込めた箱のような物語世界である。それがもうちょっと近代化し、写実的になってくると、バルザック「人間喜劇」のようになるんじゃないか。私はこういうのがやりたい。