杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

男子一度門を出ずれば…

昨年NHKで放送された「三島由紀夫 50年目の“青年論”」を先日ようやく見た。三島由紀夫の肉体的コンプレックスや青年への思いを軸にした、インタビュー集のようなドキュメンタリー。美輪明宏さんなど、往時の三島を知る関係者が皆高齢になり、ここら辺で話を聞いてまとめておかないと、以後その機会が失われる、ということかと思う。

三島由紀夫のことは詳しくなく、だから知らないことも色々と知ることができて、番組は面白かった。ただし私は、三島の小説、特に純文学作品の良い読者ではないと思う。。が、前に読んだ「雛の宿」は楽しませてもらった。

番組の中で、三島が東大全共闘の連中と話す場面の映像が出てきて、そこで三島が冒頭に

私は「男子一度(ひとたび)門を出(い)ずれば七人の敵あり」というので、今日は七人ではきかないようで大変な気概を持ってまいりました

と言うところがあった。私はかつて三島由紀夫と東大全共闘の対話をまとめた本を読んだことがあり、この「男子一度門を出ずれば…」が印象に残っていて、飲み会で酔っ払った時なんかにこの言葉を使って、男は信念と気概を持って生きなくちゃいけないんだよ、といったことを誇らしげに語ったことがあるのを思い出した。

「男子一度門を出ずれば…」は、男というのは世に出て活躍するようになると多くの敵(競争相手)に出会うようになる、といった意味のことわざのようだ。「男は敷居を跨げば七人の敵あり」などとも言うらしい。三島らしい言葉と言えるかも知れない。

番組はかなり三島を肯定的に扱っていた、というよりその言動を今の若者向けにピックアップしていたように思う。