杉本純のブログ

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佐伯一麦と水上勉

水上勉の長編小説『飢餓海峡』は1963年に完結し、1965年に映画化された。監督は内田吐夢である。佐伯一麦は映画を観て興味を持ち、次いで小説を読んだ。佐伯が初めて読んだ水上の小説が『飢餓海峡』である。

その経緯が、『からっぽを充たす』(日本経済新聞出版社、2009年)の「遠望畏敬の人」に書いてある。佐伯は高校1年から2年にかけての春休みに北海道に一人旅をし、『飢餓海峡』に出てくる青函連絡船に乗ったそうだ。「読んだのはそれ以前にちがいない」と書いているが、映画化された1965年は佐伯は6歳くらいである。

「遠望畏敬の人」とはまさしく水上のことで、佐伯はその中で、水上の短篇の代表作として「寺泊」を紹介している。「寺泊」は川端賞受賞作で、その意味でも水上の短篇の代表作といって差し支えないと思う。私は新潮文庫で読んだが、やたら切れ味のある文章だったことを覚えている。

さて「遠望畏敬の人」の末尾には、佐伯が文学賞の授賞式や山の上ホテルで何度か水上の姿を見たことが書いてあるのだが、どの文学賞だろう。。