杉本純のブログ

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東大にいた佐伯一麦

『月を見あげて』(河北新報出版センター、2013年)の「樹下に佇む」を読むと、佐伯一麦が2012年の節分である2月3日に東京大学に行っていたことが分かる。東大文学部の加藤陽子の招きで訪れて、話をしたようなのだが、調べてみると、震災後の魂と風景の再生をテーマとした「朝日講座 知の冒険」の講師を務めたらしい。

場所は文学部法文1号館2階215番教室で、佐伯にとっては久しぶりの東大本郷キャンパス訪問となったようだ。

というのは、佐伯は二十歳の頃に雑誌記者をしていて、東大の先生に話を聞いたことがあり、また電気工をしていた頃は隣接の東大病院の電気設備改修工事に関わったこともあったのだ。ちなみにその工事の際、高圧電流が流れる配線に触れて亡くなった職人がいたとのことだ。その人ではないが、佐伯は数回、電気工時代の仲間の死を私小説に書いている。

「知の冒険」は、2011年10月7日の第1回を加藤陽子が講師を務め、以後、全15回にわたって行われた。佐伯は2月3日の最終回を務めたようだが、どんな内容だったんだろう。