杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

板橋区大門と『郷を拓く』

板橋区大門は、同区の高島平と赤塚と四葉に囲まれた小さな町で、「田遊び」で有名な赤塚諏訪神社があるところ。その中に「大門児童遊園」という、これまた小さな公園があるのだが、ここに1965年に始まり30年の歳月をかけて行われた区画整理事業を伝える竣工記念碑「恵の祈り」が設置されている。

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モニュメントは、親と思われる男が持つ輪っか状の道具の中に、その子と思われる被り物をした男の子が入っている。何をしているところなのか、最初はよく分からなかったが、五穀豊穣と子孫繁栄を祈る地元の伝統行事「田遊び」の「駒っ子の舞」の様子らしいことが分かった。

「恵の祈り」の後ろのプレートには、武蔵野台地の一角であるこの場所の歴史と、区画整理事業の経緯とがまとめられている。これを読むと、大門土地区画整理事業そのものは1965年に始まったが、地元での協議は1963年から始まっていたことが分かる。

先日このブログでは板橋区徳丸の土地区画整理事業について、徳丸ヶ丘公園のモニュメントと事業の記念冊子『みのりの道』などに触れて紹介したが、大門土地区画整理事業でも同様の記念冊子が作られている。書名は『郷(ふるさと)を拓く』で、大門土地区画整理組合が2001年に発行した。『みのりの道』のように函入りではないが大型の立派な本で、区画整理や関係者の座談会の他、「田遊び」など地元の文化や歴史の紹介、事業に関する資料が掲載されている。

これを読むと、大門の区画整理の協議は日本住宅公団による高島平団地の開発(板橋土地区画整理事業)に刺激されて始まったらしいことが伝わってくる。

『郷を拓く』という書名にはどんな意味を込めたのか。いずれにせよ、この区画整理によって、都市計画道路放射第35号線(新大宮バイパス)や松月院通りといった都市道路の整備が進み、近隣を含む街づくり、ひいては首都圏の経済も少なからず発展したことは間違いないと思われる。

大門児童遊園には「恵の祈り」の他に、国の重要無形民俗文化財である「田遊び」を紹介する絵タイルが、園路に埋め込まれている。田遊びの流れと、使われる道具が描かれていて面白い。この土地の人々が地元の文化を大事にしていることが窺える。

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