杉本純のブログ

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佐伯一麦と石和鷹

佐伯一麦の短篇「……奥新川。面白山高原。山寺。」は、『en-taxi』vol.31(2010年 winter)が初出で、その後『光の闇』(扶桑社、2013年)に収められた。

「……奥新川。面白山高原。山寺。」には「羽生烏」という変わったペンネームの作家が登場するが、これは石和鷹がモデルである。佐伯の随筆集『蜘蛛の巣アンテナ』(講談社、1998年)の「咽喉のエプロン」は石和鷹との思い出を語ったものだが、佐伯と石和の初対面の場面が、短篇で「羽生」が登場する場面と酷似しているので間違いないだろう。

石和鷹は埼玉県羽生の出身だから苗字を「羽生」にし、鷹を烏にしたのかな…。なお石和鷹は本名を水城顕(あきら)というが、「石和」といえば山梨の石和温泉で、石和町は今の笛吹市深沢七郎の故郷である。なお石和鷹は元編集者で、深沢七郎と関わったことがあったらしい。

ところで「……奥新川。面白山高原。山寺。」には「羽生」のことを取り上げた「言葉は湧いてくる 声を失った作家の挑戦」というテレビのドキュメンタリー番組が出てくる。これは「咽喉のエプロン」にも出てきて、「言葉はわいてくる・声を失った作家の挑戦」と記されている。「咽喉のエプロン」は河北新報に1994年9月1日に掲載されたもので、ドキュメンタリー番組はその少し前に放送されたものと思われるが、これが分からない。どの局で放送されたものなのか。。