杉本純のブログ

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『働く人のためのアドラー心理学』

岩井俊憲『働く人のためのアドラー心理学』(朝日文庫、2016年)を読んだのだが、ためになると思うところがあった一方で、これは困るなぁというところもあった。

これは、仕事を続ける中で神経や心を磨り減らした、「もう疲れたよ……」と思わず言ってしまうような人のための本で、どんな状況になろうとも、自分の人生は自分で決められる、と説く。そのことを、アドラー心理学を噛み砕いた理論編と、八つの習慣を勧める実践編にわけて伝えている。

どれも、当たり前のことだけどなかなかできていないな、と思わせる内容で、人間という不安定な生き物をごく一般的な観点で客体化し、その関係を生きていく上で最善の打ち手を冷静に選んだら、本の通りになるだろう、と思わせる。

八つの習慣はそれぞれ、怒りとか怨恨とか憎悪とかの「負の感情」に押しつぶされそうになった時に読めば使えそうだ。いわゆる「課題の分離」とか、複雑な人間関係の中でも主体的に物事を判断し、行動していくための考え方にも触れている。

ただ、習慣を説明する中でのたとえ話が俗っぽ過ぎるというかレベルが低過ぎて、これで本当にアドラーの知恵を説明できているんだろうか、とアドラーを読んでいない私が思うほど、当たり前過ぎる感じがした。そういうところが読んでいて困ったのだが、高い知恵が身につくというよりは、必要以上にストレスを溜めず、主体的に人生を選択し、行動するためのヒントが書いてある本、と受け止めればいい気がする。