杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

物書きのアトリエ

福音館書店の『絵本作家のアトリエ』は、「1」から「3」まで三冊ある(1:2012年、2:2013年、3:2014年)。これはタイトルの通り、絵本作家のアトリエを訪ね、生い立ちや価値観について触れたインタビュー集で、福音館の雑誌「母の友」に連載された企画の書籍化である。

最近、自宅で調べ物や書き物に没頭したい欲求が強くなってきて、環境づくりも大切だと考えていたのだが、本シリーズの存在を知った時、これは書斎づくりの一つの参考になるかも、と思ったのだ。一人暮らしを始めてから今まで何度も引っ越しをしたが、書斎づくりはだいたい間に合わせで、会社勤めとか私生活の忙しさゆえに落ち着いて机に向かう時間をあまり持てなかったものの、自分だけの仕事場をできるだけ心地よい空間にしたいという思いがこのところ強くなってきた。もちろん、小説家の書斎を取材した本も読んだことはある。

『絵本作家のアトリエ』は、いずれも写真も記事も味わいがあって面白い。私は特に佐藤忠良や中川李枝子、安野光雅加古里子などが好きで、生い立ちも分かってためになった。

アトリエの写真を見て、こういう空間なら創作に没頭できるだろうと思いつつ、これは一朝一夕にはできないだろうと思った。絵本作家たちはどれくらいの期間をかけて、こういう空間を築き上げたのか。

小説家の中には引っ越しをたくさんやった人が少なくない。そういう人は、引っ越しを繰り返していた最中は私のように間に合わせの書斎だったのではないか。そう考えると、没頭というのは環境よりも作家本人の意志に負う部分が大きいのだろう。

また、絵本作家というのはけっこう儲かるんだろうなぁ、と思ってしまった。。絵本作家のアトリエ、かなり広いのだ。この出版不況の中、絵本などの児童書は成長を続けているという話を聞いたこともあるし、まぁこれらの本に出ている作家は往年のベテランだが、売れっ子になれば大きなアトリエを構えることができたんだろう。