杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

お金のはなし

近ごろお金に関する勉強をしているのだが、お金の世界というのは知れば知るほど面白いと思っている。

ネットなどでたまに目にするのは、日本人は金融リテラシーが低いとか、お金を汚いと思っている人が多い、などという言説である。しかし、そういう人は海外はもちろん、欧米人にも多いだろうと思う。

私自身の体験で言えば、私の幼児期はまだバブルにも差し掛かっておらず、人口も増えていたはずだし、給料は勤続年数と共に上がっていくもので、誰もが社会に出ればどこかに勤めるという通念が支配的だったと記憶している。私は創作をして生きていくと早いうちから決めていたが、お金を汚いものだと思う気持ちは、少しはあったかも知れない。お金儲けの巧い奴なんて狡くて心の冷たい最低の人間だ、というような思い込みを心のどこかに持っていたようにも思う。

血も涙もない人は、お金が好きで稼ぐのが巧い人の中にもちろんいるだろう。しかしそれらに客観的な因果関係を見出そうとするのはそもそもナンセンスだろう。

これからの日本はかつてのように成長しないし企業も終身雇用を維持できない、年金も足りない、だから今後は投資などで資産形成していくことが大切だ、などと世間で言われていることを鵜呑みにするつもりもないが、お金について学ぶのは益はあっても害はないと思っている。

ところで、お金のことを正面から描いた純文学とか私小説は少ない気がする。お金の話となるとだいたい大衆小説になり、銀行やら証券会社やらが出てきて贈収賄があって、というストーリーになるイメージがある。西村賢太には「小銭をかぞえる」という短篇がある。