杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

新丸子の銭湯

池井戸潤『金融探偵』(徳間文庫、2007年)を読んでいるが、かつて住んでいた川崎市が主な舞台で、どこか懐かしい。

主人公の大原次郎は、銀行を辞めて職探しをしている。自宅アパートを経営しているのは、近くにある銭湯「天の湯」の経営者でもある。その経営者が銀行から融資を渋られ、その問題を解決に導いたことがきっかけとなり、次郎は探偵めいた仕事をし始める。

その「天の湯」というのがどうやら最寄駅が新丸子駅であるようで、新丸子駅近くの銭湯というと、実際には「丸子温泉」がある。「川崎銭湯どっと混む」に載っている。私はかつて川崎市のタウン誌で働いていた頃に北部地域の銭湯の記事を書いたが、このサイトにはお世話になった。

池井戸潤はかつて新丸子に住んでいたのだろうか。こことは別のブログによると、池井戸作品には新丸子とか武蔵小杉がけっこう出てくるそうだ。

その地域には何度も足を運んだことがあるが、『金融探偵』を読んで、川崎市の雰囲気がよく出ているなぁと思った。やはり川沿いの地域というのは独特の空気があり、事件が起きそうなきな臭さがあるのも記憶にある。

川崎市にはかつて約170軒の銭湯があったが、今では激減しているようだ。とはいえ川崎区内には2011年時点で34軒があり、密度は全国一だったという。どうしてそんなに銭湯があったのかというと、区内に工場労働者が多かった頃の名残りだったらしい。