杉本純のブログ

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野間文芸新人賞の賞金

佐伯一麦は『ショート・サーキット』(福武書店、1990年)で第12回野間文芸新人賞を受賞した。副賞は100万円だった。

島田雅彦『君が異端だった頃』(集英社、2019年)には、島田が佐伯の受賞後に祝いに駆け付け、新宿で飲んだ様子が記されている。川西蘭も同行し、三丁目の「風花」など数件で飲みまくってぐでんぐでんになったようだ。

佐伯は、賞金を銀行に預け、別の場所に寄ってから戻ってくると言っていったん別れた。

 午後五時頃、戻ってきた佐伯に何をしていたかと訊ねると、馴染みの女に会いにファッションヘルスに行ってきたという。賞金の最初の使い道がそれかとからかいながら、ビールのお代わりをしたが、二日酔いで調子が上がらない。

とある。野間賞の贈呈式は12月17日18時から帝国ホテルで行われたので、小説が事実の通りならば、上記のお祝いは式の直後ということになるだろう。

ちなみに佐伯とファッションヘルス嬢と言えば中篇「一輪」が思い浮かぶ。「一論」は「海燕」の同年12月号に発表されたので、この頃にはもう書いていたはずだ。