杉本純のブログ

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クリエイティブは仁術か、算術か

以前、このブログで「仁術と算術と。」という記事を書いて、「医は仁術」とか「医は算術」とかいってどちらが医療の本質なのかという話をするのは医療以外の仕事にも当てはまるのではないか、と書いた。

最近、そのことを再び考えさせられる機会があった。それは、クリエイティブの仕事は仁術か算術か、ということだ。クリエイティブの仕事というのは、広告をはじめとして多種多様だが、おおむね発注者と受注者、つまりクライアントとクリエイターが取引をしている。クリエイティブの仕事を提供するのはもちろん受注者、つまりクリエイターで、クライアントからクリエイターへは金が支払われる。

そこで、クリエイティブの仕事は仁術か、算術か。クリエイティブにおける仁術とは、クライアントの要望を良い形で実現するために、クリエイターは持てる創造性を十分に発揮し、時間と労力を注いで業務を遂行することだと思う。逆に算術というのは、どれくらいの時間と労力をクリエイティブに注ぐかを、クライアントから払われる値段によって判断する、ということになると思う。

この議論の結論は、前回の医療と同じになるのではないか。

いっぱしのクリエイターならば、クライアントからの依頼に対し最良の解答を導き出し、持っている知識と技を駆使してそれを形にするべきだろう。しかし一方で、クライアントから払われる金が少ないのに、やたら時間をかけて凝りに凝ったものを作るのは、立派かもしれないが、そんなんでは仕事を続けられないのではないか。

ざっとそんな風に思うが、これは私の「意見」というよりほとんど「事実」で、誰だってそう考えて仕事をしているはずだ。逆に私見を述べると、そういう事実があるにも関わらず多くの人が、お金じゃない、気持ちだ、などと声高に言い、そう言う自分は立派なクリエイターか善人であるかのようなツラをしているが、私としては「お金が低いと気持ちも入らない」と言うクリエイターの方を正直者として評価したい。