杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

創作雑記9 主題を細部に響かせる

私小説を書いていて、途中から「これでは単なる手記ではないか?」と思い始め、考えた結果、数十枚分をばっさりと落としてしまうことがある。勢いが出てきてガンガン書き進められている間は楽しいのだが、冷めた目で読み返してみると、この小説はそもそもこんな話じゃないぞ、と思ってしまうのだ。

これは以前もこの「創作雑記」に書いた、決めた行程から逸れてあらぬ方向へ行ってしまうのは良くない、というのと同じで、どの道を通ってどこに辿り着かなくてはならないのかは、いちおう頭の中に入れておいた上で書き進める方が良いと思う。

それと同時に、主題も頭に入れておく方が良いだろう。いかにも手記っぽい脈絡ない内容になるのを避けて私小説とするためには、描こうとする主題を細部に至るまで響かせることが大事じゃないかと思う。書き進めていて、現在進んでいる方角は正しいか、目的地から大きく逸れていないかどうかを知るためには、今書いている部分に主題が響いているか、その小説で表現しようと思うものが出ているかどうかを知らなくてはならないから。

ストーリーが地図なら、主題はコンパスといったところか。両方とも携えておくのが良いと思う。