杉本純のブログ

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「昭和の滝田樗陰」

瀬戸内寂聴山田詠美との対談『小説家の内緒話』(中公文庫、2005年)で、高岡智照をモデルにした『女徳』について語っている。

『花芯』を書いてからは文藝誌からお呼びがかからなかったが、ある時、編集者から呼ばれたので行くと、「週刊新潮」に連載しろ、何か書くものはあるだろう、と言われた。それで「祇王寺の尼」のことを書きたいと言ったら「それでいこう」と即決したという。

『女徳』のモデルになった高岡智照という人がその「祇王寺の尼」で、有名な人らしい。それにしても、瀬戸内はモデルの許可を取るから一週間待ってくれと編集者に頼み、すぐに京都へ行ってお願いして「応援します。おやんなさい」と承諾を得て、テープなしで取材して帰った後すぐに書き始めたそうな。すごい。

高岡智照は、有名でない人を密かに応援するのが好き、ということでモデルを承諾したそうだが、ダイナミックというか牧歌的というか。。今はこういうこと、あるのかなぁ。私は以前、自死遺児の方に人を介してモデルを依頼してあっけなく断られたが、理由はよく分からなかった。頼み方とか作家の熱意によるのかも知れない。

瀬戸内を呼び出した編集者だが、

昭和の滝田樗陰とでもいうような名編集者がいたのね。

とある。『女徳』は「週刊新潮」に1962年から連載されたようで、この「昭和の滝田樗陰」は恐らく斎藤十一