杉本純のブログ

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「キャリアドリフト」と物書き

「キャリアドリフト」という言葉があるのを最近知った。ビジネスパーソンのキャリアに関する考え方で、その意味を知ると、物書き志望者などにもプラスになる言葉のように思える。

「キャリアドリフト」とは、自分のキャリア(経歴)について大きな方向性を定めるだけで、あえて細かい計画を立てたり急いで行動したりすることをせず、状況に流されるように生きる、ということ。流されるようにゆったりと生きていることで、かえって偶然の出会いや予期せぬチャンスに柔軟に対応できる、という考え方。ドリフトとは「漂流する」ことを意味する。

これは物書き志望者、つまりワナビには有効な言葉かも知れない。というのは、ワナビは常に焦燥に駆られて生きており、現状に対する漠然とした、しかし大きな不満を抱えて生きていることが多い。おおむね落ち着きがなく冷静さを失っていて、作家になる=現状を脱する、という式を現実のものとするために地道に努力することが苦手だ。挙げ句の果て、独立だとか転職だとかを安易に決断しかねない。私が知る作家ワナビは、ちょっと自分の思い通りにいかないことがあっただけで、抱えていた不満が爆発して会社を辞め、消去法的に独立してしまった。それから後、定収入を失ったことを嘆き、今に至るまで作家にはなれていない。作家になる、と、現実を脱する、の実行する順番を間違えてしまった。

誰だったかは忘れてしまったが、有名なハリウッドの俳優が、役者の仕事は待つことだ、と言っていた。演技力や体を磨き、大きな仕事が来たらいつでもやれるよう準備はしておく。もちろんオーディションにも行くが、幸運はいつ巡ってくるかは分からない。幸運が来たら、迷わず掴み取れば良い、と。

俳優のこの考え方は、言うなれば「キャリアドリフト」だろう。物書きも同じことで、普段から見聞を広め、ネタを仕入れておき、またブログなどで独自に調べたことをどんどん書いておく。テーマもある程度絞っておけば、編集者がそのテーマについての書き手を求める時に目に留まり、依頼が来るかも知れない。もちろん、新人賞などへの投稿も適宜やれば良いだろう。

大切なのは、自分の歩む道を見定め、肚を決めて「今その場から」地道にやっていくことだ。