杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

佐伯一麦と川

『川筋物語』は未読なのだが、このインタビューは面白い。それにしても、単一の川のホームページというものがあるんだな…と思った。私は荒川から遠からぬ場所に住んでいるが、荒川のホームページはないようだ。

たしかに佐伯一麦の小説には川がたくさん出てくる。「木を接ぐ」には妙正寺川が出てくるし、「端午」には多摩川が出る。『渡良瀬』には渡良瀬川が出てくる。『ア・ルース・ボーイ』には広瀬川が出てくる。

『川筋物語』には広瀬川の水文化について触れている箇所があるそうだが、インタビュー本文で佐伯が広瀬川の過去を語るところなど、感銘が深い。川、山、海など、自然に接する区域はいくつもの時代を経ても姿が変わらないことが多く、人間の営みの記憶がいくつもの層をなしている。自分が見た川や海や山の景色と同じ景色を何百年も前の人が見ている、ということもある。なんだか、小説で歴史を描くことについての示唆を得た気分。

佐伯一麦は「川男」であるらしい。大江健三郎は「森男」ではないだろうか、と思った。あるいは「木男」かな。

この記事で触れられている岩野泡鳴の「神秘的半獣主義」というのが気になった。青空文庫で読むことができるようだ。