杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

キノブックス…

キノブックス『猫なんて!』(2016年)は、作家による猫エッセイ(漫画も含む)47篇を編んだもので、佐伯一麦「猫の叫びに」が収められている。

この随筆は、佐伯の『聴くクラシック』(集英社新書、2001年)に収録された文章の再録で、夜に猫の叫びが聞こえてくることから、作曲家ベラ・バルトークの猫にまつわるエピソードの紹介へと移っていく内容。クラシック好きの佐伯らしい随筆ではあるが、佐伯による猫への想いが綴られているわけではない。そもそも「猫なんて!」というタイトルの意味が、「猫なんて嫌い」なのか何なのかよく分からない。少なくとも「なんて」という語が入っている以上、肯定的ではないと思われるのだが…。

以前、同じくキノブックスによる複数の作家の随筆を集めた『酒呑みに与ふる書』(2019年)を読んだが、佐伯の文章は、どうしてこれを選んだの?と言いたくなる内容のものだった。そして、本書もそういう印象が強い。では佐伯の書いた物の中で、これぞ!という猫エッセイがあるのかどうかというと、すぐには思い浮かばないのだが、面白いものがなければ収録しない選択肢もあるはずなので、とにかく首を傾げざるを得ない。