杉本純のブログ

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やりがい搾取

「やりがい搾取」は、東大教授の本田由紀が名付けた言葉だそうだ。経営者が労働者に「やりがい」を強く意識させ、不当に安い報酬で働かせることを意味するらしい。

私はライターを十年以上やっているが、この仕事はとても面白く、なおかつ特にフリーランスの世界などでは安い報酬が問題になっている。クリエイター稼業は押し並べて、やりがいがあり、報酬が低かったり人によって差があったりする。他にも、介護などのサービス業もそういう傾向があるらしい。

やりがい搾取とは、要するに、心が満たされていれば腹が満たされなくても我慢する、という考えの人を上手く利用して低賃金で使いまくる、という雇用者側を批判した言葉だろう。

思えば私がかつて働いたプロダクションがそうだった。編集やライターの仕事に関しては、有名人に会えるよ、社会を良くするクリエイティブな仕事だよ、などと言って私のやりがいをくすぐった。また、頑張って成績を上げれば給料はきちんと上げてやる、だから成績を上げて給料を上げるよう交渉しろ、などとも言った。しかし、私は営業もけっこうやったし、それ以外の編集・取材業務、便所掃除などもそれなりにやったが、経営者は満足せず、給料を上げてくれなかった。査定はまったく恣意的だったのだ。つまりフェアなようでまったくフェアではなかったわけで、まったくいいように使われていたとしか言いようがない。

馬鹿だった。やりがいを搾取されていたと言えばその通りかも知れないが、私はやりがいを燃やして薄給に甘んじ、際限なく労働を捧げていた。

仕事にやりがいを感じるのはけっこうなことだ。しかし生活がなくては仕事なんて成り立たないのだ。それをきちんと考えて行動しなくては。自分を救うのは自分しかいない。