杉本純のブログ

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書いて書いて書きまくる2

霧生和夫『バルザック』(中公新書、1978年)は、バルザック伝でありバルザック論でもある。バルザックの伝記は複数あるが、私は今のところ本書と鹿島茂『パリの王様たち』(文春文庫、1998年)しか読んでいない。

その中に、「人間喜劇」全九十一篇の作品を発表年順に並べたページがある。私はときどきバルザック作品を読むようにしており、読破した作品についてはこの一覧のタイトルに印を付けている。

戯れに、全九十一篇の発表年と題名を並べ、読んだものに〇を付けた。ちなみに太字になっている二十篇は、霧生が「人間喜劇」中で特に重要と思っているものだ。

一八二九年  『ふくろう党』
       『結婚の生理学』
一九三〇年 〇『恐怖時代のエピソード』
      〇『エル・ヴェルデュゴ』
       『女性研究』
       『ヴェンデッタ
       『ゴプセック』
       『ソーの舞踏会』
       『まり打つ猫の店』
       『二重家庭』
       『家庭の平和』
       『アデュー』
       『不老不死の妙薬』
一八三一年  『徴集兵』
       『追放者』
       『麤皮(あらがわ)』
       『赤い宿屋』
      〇『知られざる傑作』
       『フランドルのイエス・キリスト
       『サラジーヌ』
       『コルネリュス卿』
一八三二年 〇『ことづけ』
       『フィルミアニ夫人』
       『シャベール大佐』
       『グランド・ブルテーシュ』
       『財布』
      〇『トゥールの司祭』
       『捨てられた女』
      〇『柘榴屋敷』
       『ルイ・ランベール』
一八三三年  『マラナ家の人々』
       『フェラギュス』
       『田舎医者』
      〇『ウジェニー・グランデ』
      〇『名うてのゴディサール』
一八三四年  ランジェ公爵夫人
      〇『絶対の探求』
       『海辺の悲劇』
一八三五年 〇ゴリオ爺さん
       『金色の眼の娘』
       『神と和解したメルモス』
       『結婚の契約』
       セラフィタ
一八三六年  『禁治産
       『無神論者のミサ』
       『ファチーノ・カーネ』
       谷間の百合
       『呪われた子』
       『老嬢』
一八三七年  『平役人』
       『ガンバラ』
       『セザール・ビロトー』
一八三八年  『ヌシンゲン商会』
一八三九年  『イヴの娘』
       『村の司祭』
       『カディニャン公妃の秘密』
       『マッシミラ・ドーニ』
       『骨董室』
一八四〇年  『ピエレット』
       『ピエール・グラスー』
       『Z・マルカス』
       『ボエームの王』
       『ベアトリクス
一八四一年 〇『暗黒事件』
       『ユルシュル・ミルエ』
       『二人の若妻の手記』
       『偽りの情婦』
       『カトリーヌ・ド・メディシス
一八四二年  『アルベール・サヴァリュス』
       『人生の門出』
       『ラブイユーズ』
       『三十女』
       『続女性研究』
一八四三年  『オノリーヌ』
       『いなかミューズ』
       『幻滅』
一八四四年  『モデスト・ミニョン』
       『ゴディサール二世』
一八四五年  『実業家』
       『結婚生活の小さな不幸』
一八四六年  『知らぬが仏の喜劇役者』
       『従妹ベット』
一八四七年  『従兄ポンス』
       『アルシの弁護士』
没後     『浮かれ女盛衰記』
       『現代史の裏面』(三部作)
       『プチ・ブルジョア
       『農民』

こうしてみると、自分が読んだ作品が少なくて情けない。。

また、特に三十代前半の旺盛な執筆量に驚かされる。そして霧生の太字を元に考えると、バルザックといえど重要作が割合としていかに少ないかがわかる。やはり、書いて書いて書きまくって、大量に生み出した作品の中に、真珠のように少しだけ傑作が生まれるのだろう。