杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「寄生虫方式」

はあちゅう『半径5メートルの野望 完全版』(講談社文庫、2016年)に、「寄生虫方式」という面白い成長の仕方が載っていた。

はあちゅうさんは、自分の見た目を変えるのに、つねに美人の近くにいるようにしたそうだ。ずっと美人の近くにいて、美人がどうして美人なのかを観察し続け、分かったことを真似していったのだという。すると、美人が伝染(うつ)っていった。外見に限らず色んな仕事でもライフスタイルでも同じ手法で、優れた人の長所を取り入れていった。ずっと近くにいるから「寄生虫方式」。

これは実際かなり有効だと思う。言うなればこれは「弟子入り」ではないか。寄生先の人が寄生していることを、目的も含めて合意してくれているなら本当の弟子入りだし、合意していないなら秘かな弟子入りである。寄生せずに相手のブログや本を読みまくるのは、さしずめ私淑ではないか。

振り返ると私も二十代の長い間、複数の人に寄生していた。三十代になると、私淑の方が増えていった。毎日のように相手のブログや本を読み、その人の考え方や記述の仕方を吸収した。これは、勉強の方法とか、物事の見方とかの点で、それなりに今の私の血となり肉となっていると思う。

ただ、あまり吸収できなかった人もいた。そういう人はたいてい、その人のどこがすごいのか、私自身もよく分からないまま「何か凄そうな人」と思いを抱いて取り入っていた人だ。しばらく接して分かったのは、別にその人はどこも凄くはなく、どちらかというと自己陶酔しているだけで、凄い人間なんだぞというイメージを私に抱かせていただけだったということ。そういう人に寄生しても、得るものはない、というのが私にとっての収穫だった。以来私は、「何か凄そうな人」に心酔することはなくなった。