杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

「天文学と印刷」を見た。

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先日、初めて印刷博物館に行き、開催中の企画展「天文学と印刷」を見てきた。天文学も印刷もほぼ素人の私だが、会場の演出が面白かった。アリストテレスプトレマイオスコペルニクスといった、聞き覚えのある西洋の学者の名前が出ていたりして面白かった。

常設展だと思うが、版画や活版印刷の変遷を伝えるコーナーにはもうちょっと知っているものが並んでおり、こちらの方が楽しかった。北斎の版画が仕上がっていく流れを段階的に見せている展示には驚嘆させられた。以前、版画の心得のある人が、北斎の時代は彫りや擦りなどの各工程をそれぞれ別の職人が担当する分業制だったからあれほどの多作をなしえたけれども、今は一人で全パートをやらなきゃいけないから新作をばんばん出すのは無理、と言っていたが、なるほどあれだけの工程を一人で担うのはたしかにかなりの労力だと思った。

また、新潮社の「世界文学全集」の『レ・ミゼラブル』が展示されており、ジャン・バルジャンがマリユスをかついで下水道を通る箇所の挿絵のページが出ていて感動した。この本は恐らく、円本ブームで大衆向けに出されたシリーズの一冊である。

個人的にはいくつか面白い箇所があったが、印刷好きの人には全体を通して興味の尽きない世界だと思う。