杉本純のブログ

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阿川佐和子さんの取材チーム

阿川佐和子さんの『聞く力』(文春新書、2012年)で印象に残ったのは、週刊文春の「阿川佐和子のこの人にあいたい」の取材に臨むチーム編成を説明するくだり。

 対談をしている間は、まわりに控えている構成ライター、担当編集者、カメラマン、ときに速記者(最近は速記の方は同席しないケースが多いです)のアガワチームに加え、先方のマネージャーさんやレコード会社の人や映画会社の広報マン、ゲストの担当編集者などゲストチームの面々は、二時間ほとんど黙って私たちの会話を聞いています。

これを読むと、少し前まで阿川さんのチームは本人を含めて五人で構成されていたことが分かる。大手出版社の週刊誌の人気コーナーであるからこれくらいは当たり前なのかも知れないが、それにしても豪華な布陣だなあと思った。

私の仕事では、取材をする時はカメラマンとクライアント担当者が同席する場合がほとんどで、私がインタビューと撮影もするケースが一割か二割くらいある。あるいは、クライアント担当者もおらず私一人でご挨拶から主旨説明、取材と撮影まで全てやったこともある。とまれ、大半が一つのインタビューにつきせいぜい三人である。

私はインタビュー後の原稿執筆もするので、阿川さんのチームと比較すると私は一人二役をこなしていることになる。否、インタビュイーの発言をノートにすばやくメモするので速記めいた作業もしていることになり、一人三役といったところか。ちなみに私は以前、日経新聞記者の取材を見たことがあるが、その人は単独だった(写真撮影はなかった)。

もちろん週刊文春と私の仕事では媒体の性格も、かけているお金の額も違うだろうから単純な比較をしてはいけないだろう。そんなことよりも私が感じたのは、一つのインタビューでも細分化すれば五つの職種に分かれることであり、世の中にはそれぞれにプロがいるということだ。

私の経験では、一人でカバーする業務範囲が狭い方が、スピードも品質も上がる。その意味では、阿川さんチームはとても良い環境で仕事をしていると思った。