朝日新聞では毎週土曜日に「読書欄」が掲載される。その中に、新刊本の著者にインタビューする「著者に会いたい」というコーナーがあり、9月29日は『漂砂の塔』(集英社)を書いた大沢在昌に話を聞いている。
私は大沢の作品を読んだことがないのだが、記事の後半に書かれた、大沢の作家としての姿勢に関する箇所が印象に残った。
大沢は1979年にデビューし、新宿鮫シリーズなどヒット作も多く出してきたが、そんな中でも危機感を抱いていたそうだ。
「今度こそだめなんじゃないか、評価されないのではないかという思いは年々深くなっている」。一方で、「こんな作品は俺しか書いていないよな。だったら居場所を見つけられる」と自分を鼓舞し続けてきた。
その作品は自分が書かなければこの世に存在しない、というのは物書きとして重要な矜恃だと思う。