杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

毎日書くこと4

スーザン・ショフネシーの『小説家・ライターになれる人、なれない人』(同文書院・1998年)をツイッターを通して知った。この著者のことを私はぜんぜん知らず、元はコピーライター兼編集者でその後、小説家になった人らしいが、書いたものを読んだことも一度もなかった。

本書はショフネシー独自の考えではなく、作家や創造的仕事に就く人々による、書き手が「今日書く」ためのアイデアが述べられた新聞・雑誌記事を、ショフネシー自身がスクラップしたものが元になっている。古今東西の作家をはじめとしたクリエイターの言葉が見開きごとに一つずつ紹介され、それにまつわるショフネシーの考えも述べられていて、ためになる。

私も文学に関わる記事を多数スクラップし、それらは数冊分あって今も書棚に保管されているが、ほぼ無目的に切り貼りしたものだから、労力に見合う成果を出していない。しかしショフネシーのは最終的にこういう一冊の本になったのだから、スクラップもやり方によっては馬鹿にできないと思う。

さてバージニア州生まれでメリーランド州在住のショフネシーは、書き手(ライター)は毎日、書き始める際にある抵抗感を覚えているのだと述べ、それはライターである人すべてに襲い掛かる悪魔だと「はじめに」で言っている。ショフネシー自身が長いことその悪魔に苦しめられ、だから上述のように先人の言葉をスクラップしたのだった。

なお文脈から察するに、ここで言われる「ライター」はどうやら「作家」を指しているようだが、自らの作品を書く「物書き(作家)」と雑文を書く「ライター」がそれぞれ持つニュアンスが、日本とアメリカではどう違うのか、よく分からない。

「はじめに」の見出しは「あなたがライターになれるかどうかが今日決まる」。つまり、ライターの仕事は「今日書く」こと、それを続けること、ただそれだけなのだ。同感。まあ、それが楽ではないのだが…けっきょくのところ、ライターがライターであるゆえんは、ただ毎日書くことにしかないのではないかと私も思う。