杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

人間の探求

矢作勝美『伝記と自伝の方法』(出版ニュース社、1971年)を読んだ。

これは「印刷界」という雑誌に連載された「社史・伝記類の編集・製作」(1966年1月号-1969年2月号)に修正加筆を施して出したものだ。伝記や自伝の具体的な作り方の記述は、分量的には本の半分以下くらいしかなく、半分以上が日本の過去の伝記や自伝の批評と、批評を通した「著者のあるべき姿とは」のような論の展開になっている。

そういう部分はかなり飛ばして読んだが、面白かった。私自身、ある人物の伝記を準備中で、加藤恭子 『ノンフィクションの書き方』と同様、指南書として読ませてもらった。

矢作の文章は、~ねばならない。といった書き方が多く、ちょっと窮屈な感じがしないでもない。しかし、伝記であれば人間の探求、自伝であれば自己の探求をすることを大切にせよ、という主張はその通りだと思う。スタンダールの『アンリ・ブリュラールの生涯』は、「自分とは何であるか」という自身の最大の問いに答えるために書いた文学的自伝だと言われている。