杉本純のブログ

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大日本印刷と勝海舟

矢作勝美『伝記と自伝の方法』(出版ニュース社、1971年)には大日本印刷創業者の佐久間貞一について書かれている。前身会社の「秀英舎」は、佐久間が宏仏海、大内青巒らとともに「高橋活版所」を買い取って始めたもので、社名を付けたのは勝海舟だった。

勝は「将来英国の右に秀でる覚悟で事業の発展に努力せよ」と佐久間を激励し、社名を揮毫したという。英国の右に秀でるから「秀英舎」。

秀英舎は、大内らが創刊し、木版で印刷されていた仏教新聞『明教新誌』を活版で引き受けることからスタートしたが、それだけでは経営は困難だった。その後『改正西国立志編』の活版洋装本を受注して苦境を打開したそうだ。その前後にもいくつもの単行本や新聞の印刷を引き受けていた。日清印刷と合併して大日本印刷になるのは「円本ブーム」が去った1935年である。

勝が命名者であることは、wikipediaには記述があるが不思議なことに大日本印刷ホームページの沿革には書かれていない。