杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

エッセイ

お金のはなし16 「より良きところに住め」

「黄金を増やすための七つの道具」 ジョージ・S・クレイソン原作の漫画『バビロン大富豪の教え』(漫画:坂野旭、翻訳協力:斎藤慎子、文響社、2019年)を読んでいます。 両学長のようつべチャンネルをたまに見ていますが、その中で本書のことを知り、面白そ…

「足るを知る」

基本を着実にこなす 先日から読んでいる築山節『脳から変えるダメな自分』(NHK出版、2009年)。このブログで、「ネガティブ思考に陥りやすい」の章に書かれていたことを先日記事にしましたが、同じ章の中にもう一つ、大いに頷いた箇所がありました。 「『着…

珍現象

「会社を休み、会社の仕事をする」 世界には、人間の理解の及ばない、科学では解き明かせない事象が多くあります。そういうのはしばしば「怪奇現象」と言われ、人々は珍しそうに眺めます。 しかし、中にはその人間がおこなう怪奇現象があります。しかも驚く…

感情の安全地帯

低いハードルを確実に越える 築山節『脳から変えるダメな自分』(NHK出版、2009年)を読んでいます。この著者による、生活習慣と脳に関する本を過去に数冊読んで面白かったので、本書も手に取りました。 タイトルの「ダメな自分」は「自分の中のダメな部分」…

書店への訪問営業

同人誌と模索舎の思い出 宮後優子『ひとり出版入門』(よはく舎、2022年)を読んでいます。本書は「つくって売るということ」とサブタイトルにもある通り、自分がつくりたい本を、同人誌ではなくあくまで出版ビジネスという形でやりたい(やっている)人に向…

2023年に読んだ本

収穫はモリナガアメの漫画 Twitterでフォローしている作家が、今年の何冊目、といった書き方で2023年に読了した本を紹介していました。 作家なので膨大な量を読んでいるかと思いきや、意外にも現時点でまだ十冊にも達していない模様です。まぁ速読や冊数が大…

芥川賞と直木賞

ある書評家がnoteで芥川賞と直木賞を紹介していて、「2023年前期」の受賞作を予想していました。その記事がTwitterで「文芸オタク以外には意外と知られていない、『芥川賞・直木賞ってそもそも何?どういう作家に贈られる賞なの?』という解説を書きました!…

こじらせワナビの心情と行動

もはや趣味というより… モリナガアメ『かんもくって何なの!?――しゃべれない日々を抜け出た私』(合同出版、2017年)を読みました。 国内であまり知られていない「場面緘黙症」を患う著者が、生きづらい人生をもがきながら生きてきた記録です。記録ではあるも…

ドーパミンとの付き合い方

油断は禁物 人間の脳は、ドーパミン、オキシトシン、セロトニンという物質の分泌により、幸福感を覚えるそうです。そのことから、この三つの物質は「3大幸福物質」と呼ばれているそうです。 セロトニンは、爽やかであったり安らかな気持ちになったりしたとき…

松本清張「地方紙を買う女」

1957年の作品 松本清張の短篇「地方紙を買う女」(『松本清張短編全集06 青春の彷徨』(光文社文庫、2009年)所収)を読みました。 本書の清張自身による「あとがき」を読むと、本作の初出について「『小説新潮』に載せたと思う」と書いてあります。手元の赤…

バルザック「ゴプセック」

ストーリーよりキャラがすごい バルザックの短篇「ゴプセック」(『ゴプセック・毬打つ猫の店』(芳川泰久訳、岩波文庫、2009年)所収)を読みました。 本作は1830年に他の短篇とともに刊行された、「人間喜劇」の「私生活情景」に含まれている作品です。も…

「赤羽刀の人」

少し誇らしかった 昨年、赤羽刀についてあれこれ調べ物をしていました。 県外から書籍を取り寄せたり、都内の図書館のレファレンスに質問をして資料を紹介してもらったりして、わずかではありますが赤羽刀について理解しました。 そのこぼれ話で、私としては…

板橋区立郷土資料館恒例の「マユダマ飾り」

豊作の模擬実演 板橋区立郷土資料館の古民家で1月7日から15日まで、恒例の行事「マユダマ飾り」が行われています。 「マユダマ飾り」とは1月15日の小正月のお飾りで、農作物の豊作や養蚕なら繭の豊産を願って実施される「予祝行事」の一つです。予祝行事は、…

蔵書始末記6 『全集黒澤明』

映画に血道を上げた青春の記憶 昨年末から続けている蔵書整理。その際にお別れすることにした本の思い出を記す不定期連載「蔵書始末記」、今回は岩波書店の『全集黒澤明』です。 本書はタイトルの通り、映画監督・黒澤明の脚本全集です。監督デビュー作であ…

担保としての「実直さと才能」

古今東西にわたり価値を持つ バルザックの短篇「ゴプセック」(『ゴプセック・毬打つ猫の店』(芳川泰久訳、岩波文庫、2009年)所収)を読んでいます。その前半に、主人公である高利貸のゴプセックの、いわゆる「人的資本」に関する考えが語られている箇所が…

場面緘黙と私

静かな衝撃 モリナガアメ『話せない私研究――大人になってわかった場面緘黙との付き合い方』(合同出版、2020年)を読みました。 久しぶりに、これは俺のことが書かれた本じゃないか…!と思った一冊でした。主人公と私の精神状態が重なっていただけでなく、主…

蔵書始末記5 『批評の解剖』

「叢書・ウニベルシタス」最初の一冊 映画学校の学生だった頃、私は川崎市のある古書店で、客だった文藝評論家と知り合いになりました。当時の私はすでに映画の道を諦め、物書きの道に進もうと決めていて、知り合いになったその文藝評論家に文学のことをあれ…

変人の平和

捨て身で生きる モリナガアメ『話せない私研究――大人になってわかった場面緘黙との付き合い方』(合同出版、2020年)は、場面緘黙という一種の障害を持つ著者が、理解者が少ない中でその障害といかにうまく付き合っていくかを模索し奮闘する経緯を描いた漫画…

赤塚公園の「雪吊り」

都立赤塚公園では今年も松の「雪吊り」が行われています。2022年からやっていましたが、冬季期間中は続けられるのでしょう。 昨年までは西側の松にも施されていたと記憶していますが、今年は東側の松だけのようです。赤塚公園の冬の風物詩で、これを見ると冬…

ショートスリーパーの思い出

寝てない・努力してる・俺すごい 睡眠に関する本を出している医者の柳沢正史が、ショートスリーパーは稀であり、世の中にはショートスリーパーを自称する人がいるけど単なる睡眠不足だと言っていました。また、かつて出た、こうすればショートスリーパーにな…

熱誠と辻説法

愛すべき、困った存在 マウンティングをしてくる人はスルーで良いと思いますが、それと似て非なる特徴を持つ人がいます。熱誠を持ち、世のため人のために辻説法をも辞さない人です。 やたらと声高に自説を主張し、間違っていると思うことには間違っていると…

「描き続けるしかない」

呪われた人 数日前から読んでいる、モリナガアメの『話せない私研究――大人になってわかった場面緘黙との付き合い方』(合同出版、2020年)。 その第一話「詰んで始まる」は、著者のモリナガが、自分の人生が「詰みかけている」のを悟り、ある意味での開き直…

マイクラの効用

計画と実行を学べる 先日、サンドボックス型ゲーム「MINECRAFT(マインクラフト)」を始めた、という記事を書きました。あれから一か月ほど経ちましたが、変わらず楽しくプレーしています。 鉱石を探索するブランチマイニング、道具に特性を付与するエンチャ…

場面緘黙

生きづらさの中で生きる モリナガアメ『話せない私研究――大人になってわかった場面緘黙との付き合い方』(合同出版、2020年)を読んでいます。 HSP、発達障害、APD/LiDなどに関する本を読み、こんどは「場面緘黙」です。家庭では難なく話せるのに、学校など…

惻隠の情

日本人は劣化したか 「惻隠の情」とは、哀れに思う気持ちや、可哀想だと感じる気持ちを意味します。もう十年以上前、仕事の取材でインタビュイーが、日本の文化や日本人の感性のすばらしさか何かを説明する時、その言葉を使っていたと記憶しています。語源は…

マインドフルネスとマインドワンダリング

うまく使い分けたい マヌーシュ・ゾモロディ『退屈すれば脳はひらめく』(須川綾子訳、NHK出版、2017年)にこんな箇所がありました。 マインドフルネス瞑想はストレスをやらわげる一方で、白昼夢に関わる脳の部分のスイッチを切ってしまう。もっともユニーク…

『しょせん他人事ですから』

他人事ではない Twitterの広告を見て興味を抱いた、佐藤真通原作、富士屋カツヒト作画の漫画『しょせん他人事ですから』1巻(白泉社、2022年)を読みました。 ネットの誹謗中傷で傷ついたママブロガーが弁護士に頼んで情報開示請求したら、なんと誹謗中傷の…

小説の指導

未経験者の助言はスルーでいい 私は同人誌にいた頃、同人の年長者から自分の小説についていろいろ指摘され、その意見を参考にして次作に活かしていました。しかし今思うと、あれは意味があったのだろうか、いやまったくの無駄だったんじゃないか、という気持…

朝の岩波文庫

想像は広がる… 通勤の電車を待つ駅のホームで、恐らく20歳前後と思われる男が本を読んでいました。若い人がスマホでなく本を読むことは、べつに珍しいことでもないですが、その人が読んでいたのが岩波文庫だったので、お!と思いました。ちなみにその本はワ…

佐藤愛子の強さ

「痩せ我慢の人生」 佐藤愛子『戦いやまず日は西に』(集英社文庫、1998年)を読んでいます。この本のことは別の本で紹介されていたのを読んで知り、かねて読みたいと思っていました。 本書は佐藤のエッセイ集で、1995年に海竜社より刊行されたもの。初出は…