杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2022-01-01から1年間の記事一覧

自分の国

ウエズランディア ポール・フライシュマン作、ケビン・ホークス絵『ウエズレーの国』(千葉茂樹訳、あすなろ書房、1999年)を読みました。 ちょっと天才肌で、学校では浮いてしまっている風変わりな少年・ウエズレーが、夏休みの自由研究で自分だけの文明を…

アメリカの百科事典

虚栄としての教養 近所で廃品回収が行われ、道に各家庭から出された新聞・書籍類が置かれていました。その中に、ひときわ分厚くて大きい上製本の書籍がありました。それが一冊ではなく複数まとめて置いてあったので、さては何かの全集かなと思って確認してみ…

小説集『藝術青年』改訂しました。

小説集『藝術青年』を8月より販売していますが、一部文字化けがあったため、このたび改訂しました。 12ページ:「𠮷野家」→「吉野家」36ページ:「𠮷野家」→「吉野家」 Kindleで「𠮷」が表示されないため「吉」に修正しました。すでに購入いただいた方にはた…

今年も黄葉の赤塚公園

都立赤塚公園に行ったらいい感じに黄葉していたので、写真に収めました。このブログに、だいたいちょうど一年前に黄葉の記事を書いていました。この一年、長かったような、短かったような… 銀杏の並木はキレイなのですが、落ちてつぶれた実が放つ臭いはけっ…

幸田文と佐伯一麦

「完璧、といってもいい」 佐伯一麦が幸田文『木』(新潮文庫、1995年)の文庫解説を執筆したことを、『Nさんの机で』(田畑書店、2022年)で知り、さっそく『木』を読みました。 『木』の単行本は、1990年に幸田が死んだ後、1992年に遺著として新潮社から刊…

『スマイルズという会社を人類学する』

会社と労働について考える 小田亮、熊田陽子、阿部朋恒『スマイルズという会社を人類学する』(弘文堂、2020年)は、Soup Stock Tokyoをつくった遠山正道氏の会社、株式会社スマイルズを人類学者たちが「フィールドワーク」した本です。スマイルズと遠山氏に…

「マインクラフト」を始めた。

『ロビンソン・クルーソー』のような 先日取材したあるイベントで、発達障害のグレーゾーンの人が「マインクラフト」をやり始めると物凄い集中力と創造力を見せる、という話を聞きました。 「MINECRAFT(マインクラフト)」は、スウェーデンで作られたオープ…

「春秋の筆法」

そんな言葉を最近知りました。歴史や記録に対する厳しく公正な態度のことで、間接的な原因にも重要な意味を認め、直接的原因であるかのように述べることを指します。孔子の『春秋』における記述態度に由来する言葉です。「春秋の筆法でいけば、アメリカの資…

『デザインの歴史』

広く浅く学べる 暮沢剛巳、伊藤潤、山本政幸、天内大樹、高橋裕行『カラー版 図説 デザインの歴史』(学芸出版社、2022年)を読みました。 産業革命以降の欧米のデザインの変遷をまとめた本で、カラー図版が豊富でテキストとの配分がよく、読んでも見ても楽…

エベレスト

サステナを意識した内容 サングマ・フランシス『エベレスト』(千葉茂樹訳、徳間書店、2019年)を読みました。 先日、同じ著者の『アマゾン川』(ゆらしょうこ訳、徳間書店、2022年)を読み、これが面白かったこともあって手に取りました。本書は『アマゾン…

メモリーツリー

研究や創作に応用できそう 三田紀房『ドラゴン桜』7巻(講談社、2005年)に、大量の情報を記憶し、忘れにくくするためのツールとして「メモリーツリー」が登場します。高校生たちは理科の勉強をするために与えられますが、それを主人公の桜木先生は応用し、…

アマゾン川

生命の源 サングマ・フランシス『アマゾン川』(ゆらしょうこ訳、徳間書店、2022年)を読みました。 アマゾン川の自然や歴史や文化を解説する本で、ロモロ・ディポリトによるカラフルなイラストが魅力的な一冊です。 サブタイトルに「生命の源」とありますが…

オンとオフ、ハイとロー

ローでもいいので進む 三田紀房『汗をかかずにトップを奪え!』(大和書房、2007年)に、ビジネスマンはよくオンとオフ、つまり仕事と休暇を切り分けて考えるが、そうではなく常に仕事モード、すなわちオンの状態にしておくべきだ、と述べる箇所があります。…

APDとLiD

聞こえているのに聞き取れない 漫画家・イラストレーターの「きょこ」著『マンガAPD/LiDって何!?』(合同出版、2022年)を読みました。 「聞こえているのに聞き取れない私たち」という表紙のキャッチフレーズに思い当たるところがあり、手に取りました。 AP…

日本刀の世界

日本の歴史と文化を物語る 刀剣春秋編集部監修『日本刀を嗜む』(ナツメ社、2016年)を読みました。タイトルの通り、日本刀を美術品として楽しめるようになることを目的とした本で、日本刀の各部の名称や歴史、入手・鑑賞・手入れの方法、文化に至るまで、そ…

内向型人間の生き方と働き方

具体的なステップとツール 堤ゆかり『もう内向型は組織で働かなくていい』(世界文化社、2020年)を読みました。著者は内向型コンサルタント・心理カウンセラーで、本書は、内向型の気質を持つ人に向けた、組織で働かなくてもいい道を案内するものです。 「…

北区中央図書館に行ってきた。

文学推しの図書館? 先日、用事があって北区中央図書館に行きました。埼京線十条駅で電車を降り、十数分かけて歩いて行きました。 赤レンガの外壁が特徴的ですが、この赤レンガは外壁だけでなく施設内にも見られます。1919年に建設された陸上自衛隊十条駐屯…

さまよう思考

マインドワンダリング Eテレ「きょうの健康」で「大人の発達障害」について解説していました。番組にはASDやADHD当事者が複数登場していましたが、彼らの言動や考えには共感するところがあり(自分も同じような言動をする)、他人事とは思えませんでした。 …

発達障害雑感

発達障害もグラデーション? 銀河『発達障害フリーランス』(翔泳社、2022年)を読みました。発達障害を抱え、会社勤めが難しい人にフリーランスになる生き方をすすめる本です。 ADHDとかASDなどのフレーズは、最近よく耳にするようになりました。また、そう…

お金のはなし15 お金と仲良くする

大切なのは心の余裕 学生時代からお金に困っていたこともあり、お金に関するさまざまな本や記事を読み、マネーリテラシー向上に努めています。 それで最近思うのは、お金が溜まらない人やお金に困っている人は、お金との仲があまりよろしくないのではないか…

働きバチの理論

環境の力は大きい よく働く優秀な働きバチ100匹を一つにまとめると、100匹全員がよく働く良い巣になるかと思いきや、一生懸命に働くのは25匹くらいで、約50匹はそこそこの力で働き、残りの25匹は怠けて働かなくなるのだそうです。会社などの組織にも同じよう…

PASSAGEに行ってきた

客は読書家 神保町に3月にオープンした噂の共同書店・PASSAGE by ALL REVIEWSに行ってきました。 多くの棚が並び、その一棚ずつに店主がいる風変わりな共同書店です。プロデュースは仏文学者の鹿島茂。 古書や珍書が多く、面白かったです。猪瀬直樹や原武史…

リセット願望

今、ここから変えるしかない 三田紀房『汗をかかずにトップを奪え!』(大和書房、2007年)を読みました。 マンガ『ドラゴン桜』作者による、ビジネスマンの心得指南書です。本には『ドラゴン桜』の主人公である桜木先生が冴えないビジネスマンに現実をビシ…

水心子正秀と門弟たち

大慶直胤と氷心子秀世 先日、久しぶりに板橋区立郷土資料館に行き、開催中の企画展「接収刀剣―板橋に集いし赤羽刀―」を見てきました。この企画展は郷土資料館の開館50周年記念の特別展で、私は始まってすぐに一度見に行きました。その感想はこのブログに書き…

エタる

肝が据わっていないから そんな言葉を最近知りました。 創作中の作品が完結せず終わり、永遠に未完のままになる、といった意味のようです。「永遠の」を意味する“eternal(エターナル)”からできた造語です。小説投稿サイトなど、創作者の集まる界隈で使われ…

心理的自叙伝5 おくのほそ道

かつては「おくのほそ道主義者」だった 久しぶりの心理的自叙伝です。 以前、このブログで「おくのほそ道主義」という記事を書きました。物事は何でも突き詰めればいくらでも深く掘り下げることができる、つまりどんなことにでも「おくのほそ道」はある。け…

佐伯一麦と「Eさん」

秋闌 朝日新聞10月12日朝刊31面に、佐伯一麦のエッセイ「想 ケヤキのハンモック」が掲載されています。 4月13日に掲載された「耕せど 風は冷たい春」、7月13日の「夏の夕方 感じる水の恵み」に続く第三回です。今回は「雨を憂い 草と戦い 秋が来た」で、彼岸…

佐伯一麦とS

猿を飼っていた友人 佐伯一麦『Nさんの机で』(田端書店、2022年)の「コーヒーメーカー」には、佐伯の友人のことが書いてあります。 佐伯と中学時代から一緒だったSは、佐伯にクラシック音楽やコーヒーの美味しさを教えた人であり、高校時代には同人誌「青…

高解像度人間

環境は慎重に選びたい HSPに関する本を断続的に読み続けています。私自身が恐らくHSPですので、HSP関連書は自身の生活を通じて実感することの確認と、少しでもストレスを減らして快適に暮らすヒントを得ることを目的に読んでいます。 エレイン・N・アーロン…

松本清張と鉄道

西村雄一郎の授業 NHKの「新日本風土記スペシャル『松本清張・鉄道の旅』」を見ました。私は風土記が好きで、大切だとも考えていて、この「新日本風土記」はよく見ています。松本清張をテーマにしたものは他にもあったはずですが、鉄道の旅を中心としたもの…